東洋思想に学ぶ

儒教のエッセンス・孔子 /「礼」と「仁」

2018年8月29日

儒教のエッセンスについてお話ししましょう。孔子抜きには、儒教は語れません。では孔子は何を説いた人なのでしょう。まず時代背景から見てみましょう。BC770年から周王朝はその統治する力が減少したことにより都を東の洛陽に移します。この年から春秋時代が始まり、BC403年まで続きます。すぐに中国大陸の中央部、これを「中原」といいますが、ここでは12ヶ国が乱立して戦争を繰り返す不安定な状況の時代となりました。孔子はBC551~BC479年までを生きた人ですから、この時代の人です。この不安定な時代を何とか安定を取り戻したいとして多くの思想家が安定の要点を各々自説として主張しました。これを「諸氏百家」「百家争鳴」といいます。孔子もその一人です。孔子は「」を秩序の源泉にしようとします。

古代人は、この広大な宇宙を眺め、そこに絶対的な秩序が存在することを発見しました。もしそれが無ければ、この宇宙ではあちらこちらで、星と星が衝突し、大変な混乱が絶え間なく発生していることでしょう。しかし、宇宙は実に秩序正しく動いているのです。この絶対的な秩序をこの地球上に降ろしてくることによって、秩序破壊の極地である戦乱の世を終わらせることは出来ないかと考えたのです。宇宙の秩序の源泉として発見したのが「」です。そして我々がすむ社会を秩序正しく運営する為の最大の要点こそ「」にある。礼による社会の形成を願ったのです。現在でもどの様な混乱の発端にも礼の無い行為、「非礼、無礼」があることを思えば、この主張は正しいといえましょう。「」の概念を整え、平穏な社会を維持する原動力にしようとしたのが孔子です。

と同時に孔子は、もう一つ「」もまた、平穏な社会の維持には必須だと思ったのです。「」とは何か。思いやりです。人が自分以外の人々に、思いやりをもって接することこそが、反発や反抗、言い争いや紛争、嫌悪や憎悪の無い人間関係を形成させます。人が人を殺し合うという混乱をその発端から絶ち切ることが必要なのです。それには仁を大切にする人間の育成が大切と考えたのです。

こうして儒教は、平和な社会、つまり殺し合いが無い社会をつくる最大の要因として、「礼と仁」更に「義、智、信」を挙げました。その後これは「仁、義、礼、智、信」として五常としてまとめられました。