東洋思想に学ぶ

孔子に学ぶ---論語2

2019年12月26日

みなさん、こんにちは。東洋と西洋の知の融合研究所事務局の瀧上です。私が論語を勉強していく中で興味深いと思ったことをシリーズでお伝えしていきます。

さっそく論語の中から一句紹介します。

子曰く、徳有る者は必ず言(げん)あり。言有る者は必ずしも徳有らず。
仁者(じんしゃ)は必ず勇有り。勇者は必ずしも仁(じん)有らず。

徳のある者は必ずよい言葉を言う。しかしよい言葉を言うものは必ずしも徳のある者とは限らない。仁のある者は必ず勇気がある者だが、勇気がある者が必ずしも仁のある者とは限らない。
※徳:自己の最善を他者に尽くし切ること、仁:思いやり

「徳」とは最高の人としてのあるべき姿、人間に備わっている良き性質を意味します。ちなみに徳の内容は「五常の徳」と言って、仁(思いやり)、義(正義)、礼(秩序)、智(智恵)、信(言行一致)という5つに分かれています。孔子はこの五常の徳の中で仁が一番徳の高い、大事なものだと言っています。儒教や論語の世界では、徳は元々人間が生まれ持った性質です。しかしただ持っているだけではだめで、その性質をきちんと発揮できなくてはいけないとされています。

この句は、「人間として備わっているよき性質をちゃんと生かしている人は必ず良い言葉を言う。なぜなら自己の最善を他者に尽くし切ることを実践して生きているから。しかし良いことを言っている人が必ずしも徳が高い訳ではなく、口先だけで良いことを言っている場合もある。普段から思いやりのある人は、思いやりから発してやるべき時には必ず勇敢なことをする。しかし外から見て勇気のある人は必ずしも思いやりがあるとは限らない。単に血気に逸って行動しているだけかもしれない。」と読み取ることができます。

一方で、東洋思想には「中庸」という思想があります。「東洋思想に学ぶ:陰陽論とは」でご紹介した、行き過ぎれば逆に転じるという考え方です。仙台藩主の伊達政宗はこんな言葉を残しています。


仁に過ぎれば弱くなる。
義に過ぎれば固くなる。
礼に過ぎれば諂となる。
智に過ぎれば嘘を吐く。
信に過ぎれば損をする。

大事な五常の徳ではあるけれど、これに固執しすぎると良くない方向に向かってしまいます。バランスを見極める力も必要ですね。

普段本当に自分は相手のことを思って行動しているのだろうか。振り返ってみて反省しました。これからも論語を学びながら、徳を身につけるには具体的にどうしたらよいか、考えていきたいと思います。